二日前バンコクから一時帰国中のF氏からこんなメールが入った。「一杯いかが?13日、7時さいき」 という訳で今晩は恵比寿の酒寮「さいき」で以前同じ合唱団で一緒に歌っていたF氏、K氏と私の三人で久し振りに一杯やってきた。「さいき」さんは、恵比寿に店を構えて今年で60年を迎える老舗である。
合唱団が創立して間もない頃、練習場所が恵比寿だった当時、毎週練習後の21時半過ぎに必ず寄っていたお店で、行き始めてから、早いもので30数年の歳月が流れてしまった。店の外観も、店内も当時のままで、白木の一枚板のカウンターとテーブル、カウンター内の食器棚、おしながきの黒板、どれも当時と全く変わっていない。周りのお店の殆どが変わってしまったなかで「さいき」だけは時が止まってしまったかのようで、昔のままの姿を残している。
暖簾をくぐると先代の女将さんの「おかえりなさい」という元気な声が今でも聞こえてきそうである。女将さんの櫻子さんが、斎木家代々受け継がれた100年(今は120~130年位か?)の糠床で漬けたお新香の味は絶品だった。今でもその糠床は生き続けている。
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20歳代にタイムスリップして昔話に花が咲き、お酒をがすすみ、楽しいひと時を過ごすことができた。あっという間に閉店の時間が来てしまった。おあいそしてというと「14円50銭」また、女将さんの声が聞こえてきた。「いってらっしゃい」と送りだされて暖簾をくぐる。そんな女将さんも、8年前に他界。今はご長男の邦さんが店を切り盛りしている。
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つい数日前に「さいき六十周年を祝う会」の招待状が届いた。この間恵比寿ガーデンプレイスでの五十周年があったのに、もう10年も経ってしまったのか?
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その時の女将さんの写真が店の片隅に掲げられてある。
私も半年前に還暦を迎えた。「さいき」と同い年だ。我が家の家紋は、「丸に剣かたばみ」さいきさんの家紋と同じだ。何だか不思議な縁を感じる。
女将さんが若く元気だった頃は、終電に間に合わないことも度々あり、その時は暖簾をしまい腰を据えて本格的に酒盛りが始まる。東の空が白々と明るみ始め、始発電車が走り始める頃炊き立ての白いご飯に味噌汁とお新香の朝ごはんをいただき、「いってらっしゃい」の声に見送られ、そのまま会社に出勤していった。
「さいき」は青春時代の思い出の一杯詰まったお店なのだ。
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